SIREN と日本人

GW中にハマったのが、PS2用ゲーム「SIREN」である。バイオハザード型のホラーゲームだが、舞台は純日本風で、さらにいろいろとひねりが加えられている。その中でも特筆すべきなのは「視界ジャック」だろう。

これは文字通り、三次元マップ上にいる敵(SIRENでは『屍人』と呼ばれている)の視界を、主人公キャラクターが横から覗き見ることを可能にする機能である。これにより、相手から見て自分の位置がどう見えるのか確認しながら、自分の行動を決めることができる。強い敵キャラとの戦闘を避けて先に進みたい場合や、ふつうに敵の位置をしらべる場合にべんりな機能である。

くだらない願望だが、視界ジャックが現実世界でも使えたらいいのに、とゲーム中しばしば考えてしまった。いや、私だけではなく、これは日本人にとって必須の機能なのではないか。

欧米人とくらべて日本人は、相手の目を見て話すことが苦手だといわれる。実際、一度も相手と目をあわさないまましゃべる人もたまにみかける。さらに多いのが、「相手がこちらの目を見ているときには、自分も相手の目を見なくては失礼にあたる」「しかし、相手が見ていないときに自分だけ凝視していても無作法だろう」という相反する要求にこたえるため、相手の目を見たりそらしたり、視線の激しい往復運動をする人たちである。これは、見ていてこちらがつらくなる(うっかりつられて、自分も視線の往復運動をはじめたりするから厄介だ)。

こんなときに便利なのが、SIREN の「視界ジャック」機能だろう。相手が自分を見ていることを確認しながら、自分も相手の目をみることができる。また、相手が見ていないことを確認しながら、安心してあらぬ方向に目をやることができる。日本人が日本人として生きていくうえで抜けることのできないオキテを、いささかなりとも、緩和してくれるのだ。

それ以外にも、アイツと話すと長くなるから今は話したくない、というときに相手の視界に入らないようにソーッと脇を通っていくなどの普通の使い方もできることはいうまでもない。近年、脳科学の進歩にはすごいものがあると聞く。だれか、心やさしき日本人のために、「視界ジャック」機能を実現してくれないだろうか。