サイトを「買わなくてはいけない?」

木曜日。

コナンは番組冒頭、神妙な面持ちで視聴者に語りかける。

「これから私が言うことは、コントのために作った話ではありません。100%、まったくの真実の話なんです。信じてください、100%真実です!

さて、僕は月曜日に、マナティーに関するコントを行いました。(ここで前回のビデオ映像が流れる)

最後にウェブサイトの名前を言いましたが、これは台本にはなく、僕がその場で思いついていったサイト名です。実際には存在しません。

しかし、この番組の後に、私は NBC の法務に呼び止められ、こんなことをいわれました。

『存在しないウェブサイト名を、公共放送で言うことは、法律で禁じられている。もしかりに言ってしまった場合には、放送局はそのサイトを買わなくてはいけない

いまだに僕はこれが信じられないのだか、弁護士に言わせると、もうはっきり法律に書いてあるので、いちど放送してしまった以上、まったく避けようがないとのこと。

な・の・で、常にエンターテイメントの新しい歴史を切り開いてきたNBC放送局は、せっかくの機会を無駄にすることなく、ここに高らかに、http://www.hornymanatee.com/ドメインを5000ドルにて購入し、ウェブサイトを作成したことを宣言します!」

かくして、上記のサイトは存在していて、見ることができる。

サイトでは、マナティーのあーんな姿やこーんな姿が映っている。さらにコナンは、「マナティの写真を持っていたら、ぜいひとも僕らに送ってね! 送り先? それはもちろん Conan@HornyManatee.com だからね!」と、視聴者の参加も求めている。

サイトは、開設してから3日で数百万ヒットを記録したそうだ。「まったく、アメリカ人はほかにやることがないのかねぇ。。『あ、コナンがなんかサイト名を口走った! よし早速みるぞーカタカタカタカタ……マナティマナティ……』この国はこんなんで大丈夫なの? 心配になってきてしまった」

私は、この法律がどのような保護法益を持ち、いかなる正義の実現に貢献するのかまったく理解できない。存在しないウェブサイトの名前を聞かされて不利益を受ける人がだれかわからないし、そのような「被害者」がテレビ局を訴えるための理屈もわからない。日本の法状況に置き換えたら、ちょっとありえないような話だ。

誰もわからない。でも法律で決まっている。だからみんな従う −−アメリカ社会の怖さと冒頭に書いた次第である。


あ、ちなみに法律によれば、NBC はこのサイトを最低10年持ち続ける義務があるそうです。マナティーのなまめかしい姿態に興奮するひとには、朗報ですな。